「風邪と風邪薬と小児科医」について(当院の基本方針)
こどもの病気の主役は咳や鼻水、発熱などのいわゆる「風邪」と呼ばれるものです。風邪の原因の9割以上はウイルス感染であり、ほとんどのウイルスには治す(ウイルスを減らす)薬はありません。またウイルスには抗生物質は効果がありません(抗生物質が効果を発揮するのは細菌です)。
クリニックを受診し風邪薬をもらい飲んでいるからといって、すぐに症状が良くなるわけではなく、ほとんどの場合は数日の経過で自分の力(免疫)で治ります。
「風邪」に対して風邪薬を飲む目的は、「飲んで治す」ためではなく、自分の免疫で治るまでの間に起こる不快な症状(発熱や痰がらみの咳など)を緩和させるためです。
熱で体が辛いときには解熱剤を使い、痰がらみの咳をして苦しそうなときには、咳止めや痰切りの薬を適切に使用します。
また「風邪」を診察する小児科医の役割としては
- ❶ そのときの症状に合った適切な風邪薬を処方すること
- ❷ ほとんどの場合は自分の免疫で治る風邪ですが、時に細菌感染を合併し、肺炎やその他の重篤な感染症を併発してしまう可能性があるので、それらを適切に診断し治療すること
- ❸ 症状があって辛そうなこども達をご自宅で様子をみるときの注意点や次の受診のタイミングなどをご家族に分かりやすくお伝えすること
の3点に尽きると思います。
「風邪を治す」ことに対しては小児科医も無力です。しかし、小児科医には自分の免疫で風邪を治していくまでの期間に症状を緩和させ、かつ重症化していないかどうかの判断を行いながらご自宅で安心して様子をみていただけるようコーディネートすることは可能です。必要な薬を使用すること、また決して必要以上の薬は使用しないこと、安心してご自宅で様子をみていただけるよう分かりやすく説明を行うことを当院の基本方針としております。